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一度知ってしまったからの、寂しさ。 それを知っているからの、歓喜。 こんにちは、こんにちは。 さよならの言葉 5 「なァ、聞いたかよ?」 「あー?なにが。」 「なにって、五代目が言い出したあれだよ、あれ。」 最近なにかと落ち着いている木の葉の里。 里に住まう者としてはそれは望ましいことではあるし、 里長である綱手にとっても人びとが安心して暮せることは この里が出来てから代々の火影たちが願ってきたことでもあるため、甘んじてる部分はある。 しかし、木の葉が平和に向かえば向かうほど 里長として数々の選択にせまられることも多くなるのもまた事実。 隣国からの干渉、自国の防衛。 戦うという姿勢は、一度作ってしまった以上そう簡単には崩せない。 だが特定の敵がいない今はどうしたって、末端まで軍力維持の意識が保てない。 そこで五代目火影である綱手が提案したのは、 上忍及び特別上忍の能力を互いに高めるためという名目での大規模な演習。 「なんだってそんなめんどーな事・・・。」 普段殊勝に己の身を磨いているものは、今回の演習に関してなんの不満も抱いていない。 保身ばかりを考え、文字通り平和ボケしているものに限って今回の演習に影で難癖をつけていた。 そんなこんなで、木の葉の特上より身分が上のもの達の間では 今度開催される演習についての話でもちきりだった。 「よォ。」 報告書を出した帰り道、前から歩いてきたのはアスマと紅。 「なーに、デートですか。お二人さん。」 からかうようなカカシの言い草に、紅は珍しく取り乱して言う。 「なっ///ち、ちがうわよ!アスマとはさっきそこで偶然会ったからご飯でもって。」 「ふーん。」 顔を真っ赤にして否定する、めずらしく少女のような紅に 自然とカカシはの姿を重ねてしまう。 『・・・?!!かかか、か///』 『ん、なぁに?』 小説を読むのに夢中でちっともオレにかまってくれないに 意地悪のつもりで気配を断って近づき、耳元でささやいてみる。 すると、ホラね。 は簡単にオレでいっぱいになる。 『いきなりなんて反則です///!!』 怒りながらも、真っ赤になった耳を押さえて叫ぶは たぶん怒っているというより半分以上が恥ずかしいだけなんだろうケド。 『がオレをほったらかしにしとくのが悪いんじゃなーいの?』 ニヤニヤと、言葉につまるの様子を観察しながらオレは続ける。 『じゃあ、ちゃんと正面きって言えばイイワケ?』 『・・・そ、そういう問題じゃないと思いますけど・・・』 もごもごと言うの心の中など、手に取るようにわかる。 そもそもそんなコトをわざわざ口にだしてくれるな、と。 ま、わかってこっちはやってるんだけどね? 真っ赤なまま、視線をおとす目の前の愛しい人を腕にだきよせて 今度はちゃんと正攻法で 溢れる己の気持ちと、 少しのイタズラ心をこめて告げる。 『スキだよ。』 「・・・ォイ、カカシ。聞いてんのか?」 「んー聞いてるよ。」 気持ちがどこかにいっている事くらい、簡単に分かる。 けれど聞いているというカカシにあえて訂正させるのは、諦めていた・・・というより 明らかにのことを考えているカカシの表情は、たとえアスマでも止められない気がした。 「にしても、綱手様もおもしろい事なさるわ。」 微妙な空気に、紅が咄嗟に気をまわす。 それももはやカカシの事情を知っている者には、常識になっていることだった。 「優勝したら願いを1コ聞いてくれるんでしょ、あの人も大概というかなんというか。」 ため息まじりにカカシが言う。 「・・・まさかとは思うけど、カカシ」 紅の予感に、カカシはあいまいに微笑み 反対にいるアスマは興味がなさそうに、タバコをふかしていた。 「ん?そーだなァ・・・が帰ってきたら2・3日休まして欲しいとか。1週間、なんて言ったらキレられそーだしな。」 という具合にまだぶつぶつと考えている。 心配をよそに、その内容はなんとも平和的というかカカシらしいといえばらしいが・・・・。 紅はアスマに視線を向けると、ホラ見ろとその事が初めからわかっているようだった。 「それでは只今より、里をあげての合同演習を開始する。ルールは先ほどシズネが述べた通り。 優勝チームには賞金と副賞もあるからな。上位3チームまでには褒美をやるから皆、励むように。」 乗り気でない者にとっては、うらめしいほどの晴天。 絶好の演習日和。 とはいえ、綱手にしてみれば天候が悪ければ悪いほど演習が充実すると思っていたのだが。 里長の高らかな開会宣言により、大規模な演習が幕を開けた。 「・・・演習っつってもタダの借り物競走じゃないっスか。」 「まぁ、でもこんなことめったにないんだし中々面白いじゃない。」 面倒がるゲンマに、乗り気の紅。 今回の演習の内容はあらかじめ決められたチームでの借り物競走。 ルールはその名の通り、紙に書かれた物を里に住まう者たちから借りてくるだけ。 しかしそこは火影が里をあげて計画した演習なだけはある。 手渡されたのは、暗号解読班もびっくりな解読困難な指示書。 しかも2重構造で指示書が示す場所にたどりついて初めて借りてくる物が決定するらしい。 「ま、・・・マジかよ。」 「・・・これ、エグイな・・・・」 多くの者が頭を悩ませ、スタート位置から動けずにいた。 そんな中、国外にも名前がしれているだけのことはあるカカシ・アスマチームは さっさと暗号を解読し、尾行を防ぎながらも借りる物が書かれた紙をゲットしていた。 のだが。 「・・・・どう考えても、綱手様が面白がって仕組んだとしか思えねぇよな。」 「はぁ・・・・火影ってそーとーヒマなのね。」 カカシとアスマが見下ろす紙に書かれた内容に、2人ともがため息をもらしていた。 「「・・・・・」」 変な空気があたりをただよう中、初めに口を開いたのはカカシの方だった。 「とりあえず、紅探す?」 「・・・・///」 なぜか顔を赤くするアスマ。 「あれ、違った?っていうか、キモイから照れるのやめろ。」 「う、うるせぇ。・・・別に違いやしねーけどよ。」 「じゃ、紅でいいのね?」 「・・・あぁ。」 肯定しつつも、やはりどこか気恥ずかしいのかアスマの態度ははっきりしない。 それをチラリと横目でみながらも、カカシは気にしないフリをして話を続けた。 「紅捕獲するのは骨が折れそーだね。」 「でもそれしかねぇだろうが。」 咄嗟に言ってからしまったと口をつぐむアスマに、一方でカカシは事も無げに言葉を返した。 「しょーがないよ、こればっかりはさ。」 取り繕うワケにもいかないし。 偽装してもばれちゃいそうだしねぇ、と言うカカシは傍から見ればそれはのんきそうに映った。 カカシにも気づかないくらい、 心の奥深くでは綱手のしたことに苛立ちを感じていた。 この世界のドコ探したってはいないのに。 「や、探したよ。」 「それはこっちの台詞っス。」 「わりぃな、紅。俺たちとゴールまで来てくれねーか。」 「あら、じゃあこっちはカカシを渡してもらいましょうか。」 互いが互いを探していたこともあり、 カカシ・アスマチームと紅・ゲンマチームが再び出会うのにたいした時間はかからなかった。 優勝を望んでいる、というよりは こんな機会でもない限り、仲間と本気に近い戦闘をすることはほぼないという状況を 4人ともが楽しんでいるようだった。 それぞれが力を試すように 隠していた宝物を、自慢げに見せびらかす子どものように その表情は任務に比べて、生き生きとしている。 だから誰も気がつかなかった。 いつのまにかたどり着いたそこが、カカシが何度も口寄せを行っていた場所だということに。 「くそっ・・・!!オイ、カカシ。」 「アスマこそ紅の弱点とか知らないワケー?」 「・・・・どちらかというと握られてる方だ。」 こんな時にノロケんじゃないよ、と心で突っ込みつつも 「しょーがない、幻術は紅の十八番だしねぇ。じゃあ、ま。こっちはこれで応戦しますか。」 オレは、何気なく口寄せの印をきる。 生かしたままターゲットを捕獲するには、忍犬たちはもってこいなのだ。 最近やたらきっているその印は、さらに精度が増したようなそうでもないような。 「口寄せの術!!!」 地面に手のひらをつく。 煙がわずかにたち、その中心には その中心には。 「・・・・・・。」 ずっとずっと、 帰りを待ち望んでいた人。 あぁ、オレはいつの間に紅の幻術にかかったんだろう。 にしてもさぁ、紅もこんな時にの幻をみせるなんてサービスが利いてるというか ・・・残酷というか。 「ぇ、あ・・・か、カシさん?」 懐かしい声。 渇ききってたオレの全てに、ずっと望んでいた声が染み渡る。 「カカシさん・・・ただいま。」 「ぁ」 色あせたオレの心に、 あっという間に花が咲く。 やっぱりの笑った顔は、オレに光をくれる。 「やっと、木の葉に戻ってこれました。」 紅がかけた幻術でも、 望みすぎて狂った脳が見せる幻想でもなんでもない。 本能でわかる。 が帰ってきたんだって。 を確かめたくて、 オレは思わず腕をのばしてそっと頬に触れた。 「・・・・・・なの?」 「はい。」 あったかい。 このぬくもりは、オレにあたたかさをくれた人。 そう思ったら、頬に触れてるだけじゃ全然たりなくなった。 「おかえり、ずっと・・・ずっと待ってた。」 オレの方からすがるように、に抱きつくと やや遅れて背中に腕が回される。 「ごめんなさい、カカシさん。待ちくたびれましたよね。」 「・・っ・・」 確かめるように かみしめるように、 何度も何度も、名前を呼んだ。 「もう、本当にどこにも行きませんから。」 「ずっと、死ぬまでカカシさんの隣で生きてくって決めましたから。」 オレを安心させるためかぽんぽんと、肩口に埋めた頭をなでられる。 一気に潤いすぎて、心が溢れたらしい。 ヤバイ、どうしよ。 「・・・・・。」 急に黙ったカカシさんを不思議に思ったが、 呼んでも顔も声もあげない。 「カカシさん?」 「・・・ちょ、・・・タンマ。」 かすかに聞こえてくる声が 合間に鼻をすする音が 不謹慎にも、嬉しくて。 カカシさんが私なんかに逢えたことで泣いている。 うまれて初めて、愛しさで息が出来なくなることがあるんだと知った。 その状況を、少し離れたところから見ていたすっかり蚊帳の外な3人は。 ゲンマはとりあえずカカシと同じチームのアスマを見た。 「あー・・・緊急事態ってことで10分待て」 オレにふるな、とでも言いたげに視線を明後日の方向に向けながら適当に答える。 「えーそれじゃ俺たちが優勝のがしちまいますよ。」 ゲンマてめぇ、あんなにめんどくさがってたじゃねぇかよ。 「ねえ、このままさんも一緒に火影様のトコにいけばいいんじゃないの?」 「あ、それもそっスね。」 「まぁ、どっちにしろあと5分は休憩だな。」 「いいじゃない、ここはさんに免じて私達も一時休戦よ。」 「「「泣いてるカカシ(さん)なんて一生に1度見れるかどうか。」」」 日も沈みかけ、辺りが一面オレンジ色に染まる木の葉の里。 再び参加者全員が朝同様に集まった。 気になる演習の結果はというと。 カカシ・アスマチームの指示書には『生涯添い遂げたい人』 紅・ゲンマチームの指示書には『写輪眼(片目でも可)』 4人が若干巻き込まれた一般人1人を連れて綱手の前に、現れた。 「・・・コホン。あー・・・一着にゴールしたのは2チーム同時だった訳だが。」 「対象物をより多く持参したカカシ・アスマチームを優勝とする。」 「で、アンタらの願いっつーのはなんだい?」 「そりゃー決まってますよ、五代目。オレの・・・願いは」 アスマそっちのけで、カカシはそれまで向いていた五代目から 隣にいるの方へと向きなおしてその手をとった。 「ねぇ、。結婚しよっか。」 突然の事に、はもちろん、 その場にいた全員が状況をつかめずに唖然としている。 「あははは、びっくりしてる。」 「誰が・・・・?」 「オレが。」 「誰、と??」 「そんなの決まってるでしょーよ、と。・・・オレと一緒の名字はイヤ?」 「ケ、ッ・・・コン・・・」 その言葉を噛み砕くのには時間がかかったが、 飲み込んでみると案外答えは決まっていたような気がする。 紙切れ1枚でカカシさんが安心なら私はいくらだって構いませんけど。 けど、だけど私はもっとちゃんとしたものが欲しい。 「カカシさんの奥さんになれるのは、すごく・・・嬉しいです。」 「・・・マジで。」 こんなにすんなりと了承してもらえるとは思っていなかったカカシは、 自分で言い出しておいての答えに驚いていた。 てっきり、真っ赤になってこんな時に!とか突然なに言い出すんですか! とかって久々にに怒られるのもいいなーって思ってたんだけど。 はまっすぐにオレを見てそう言った。 オレの大スキな笑顔で ずっとずっと見たかったその優しい瞳に、オレだけを映して 「でも・・・心の準備というか。恋人としてのイベントごとあらかたすっとばしていきなり夫婦なんて、 なんかさみしいじゃないですか。じっくり、1つ1つ重ねていってそれでも遅くはないでしょう?」 そこまでを一気に言い終えると今度は 怒られるのを怖がる子犬のようにオレを見上げてきた。 「それから夫婦になるっていうのは・・・だめですか?」 今度はオレが答える番。 「ダメ」 思わず伸ばした腕に、この場でもを抱きしめる 「・・・・じゃなーいよ。」 すると、ほっとしたのか腕の中での肩の力が抜けると 来年の今日、カカシさんがもう1度そう思ったらその時にもういっかい言ってください。 と、オレにだけ聞こえる声でそう言った。 勢いで結婚はしたくなかった。 これから木の葉の里で、ちゃんと地に足つけて落ち着いて生活できるようになって きっとそうなった時は今よりもっとカカシさんのことがスキになってて。 私がそう考えていることが伝わったのか、 少し離れて見上げたカカシさんの表情は柔らかい。 「ん、りょーかい。」 演習からの帰り道。 久しぶりの、2人一緒の帰り道。 その影は手の部分で繋がっている。 「あ、ねぇ。」 「はい。」 「いっこ言い忘れてたんだけどさ。」 「なんでしょう?おかえりは言ってもらいましたし・・・」 −ちゅっ 「愛してる。」 「なっ・・・ななな///」 「帰ってきたらずっと言おうと思ってたんだよね。スキじゃなくて今度は愛してるって。」 スキも愛してるも、 ホントは言葉なんかじゃ足りないんだけどね。 次の日にカカシはこのたびのことをの話を折りなぜながら三代目に報告しにいくと その口から四代目の意思を知ることとなる。 「死んでも尚心残りに思うのは、残す弟子の幸せ・・・かの。」 そしてどこから漏れたのか、は唯一カカシを泣かした女として 里中でその存在を知らぬものはおらぬほど有名となった。 ヘタレ顕!在! ワタクシの書くカカシ先生は、よわっちいんだぜ! 戦闘シーンは無理です。 動きうんぬんの以前に、イメージすら頭にわかないww かっこいい戦闘シーンを描写できる方が神にみえる。 結婚はやりすぎかなーとも思ったんですが。 しばらく婚約関係が続きます。気が向いたら夫婦になると思います。 こんなにひっぱったのに、再会は案外あっさり・・・ううむ。 テンゾーさんとの決着はまた今度です。 |